オムライス全4話が好評だったみたいなので今日はもう一つおまけで昔話を…
このコロナ禍で今やもう懐かしい話になってしまったが、以前はお客さんのお供として建前上は通訳や引率者ということでここパラワン島のKTVをアテンドしていたことがあった。
男だけのグループや男の一人旅の場合は夜のアクティビティも旅の重要なイベントの一つ。
ただよく分からない島でよく分からないKTVに行くのは彼らにとってはサバンナを無防備で歩くような怖さがある
なのでサバンナをサファリパークにする変換装置として私に白羽の矢が立つのである
基本は日本人のお客さんと一緒の場合は最初にシステムをレクチャーして適当に場が盛り上がったところでテーブルを離れて必要になった時だけ対応していた。
まぁそれでも半分以上の人は一緒に飲みましょうよと言う感じで誘ってくれてずっと一緒にいることもあったが、一応は仕事の一環なので何も言われなければ「ではちょっと自分は外しますね」と言って頃合いを見計らって席を外す。
そもそもお酒が入れば大人の夜の社交場での会話に通訳もクソもないのだが、それでもお客さんが慣れるまでの前半と会計する時は必要となる部分はあった。
ちなみに席を外した後の2-3時間に何をしていたかというと、お客さんからは絶妙に見えづらい別の空いたテーブルに腰かけて誰かが歌うやたらどデカい音量のカラオケなどをボーっと聞くだけ
そんな私のそばにはお客さんに指名されていない女の子が同じように待機していることも多かった。
日本と違いフリーでテーブルに付くということはないので彼女達は指名されるまではスマホをいじって暇を潰す。
こんな感じなので自然と顔見知りは多くなり話もするようになる。
お金を払わず会話が出来てラッキーと思う方もいるかもしれないが、お客さんのテーブルについていない時の彼女達はめちゃくちゃ行儀が悪く、のけ反ってソファに腰かけパカッと脚を大きく開き、終いにはスマホ片手にもう片方の手で雑に盛られた晩飯を食べながらの会話になるのでラッキーと呼ぶには厳しいものがある。
そんな連中の中に背こそちょっと低いが色白で珍しくそこそこカワイイ、マニラから働きに来ていたAがいた。
ちなみにパラワン島のKTVで働く女の子の多くはマニラやその周辺から来ている場合が多い。日本で例えると関東から身バレしない沖縄のキャバクラに出稼ぎに行くような感じ。
特定の地域の出身者が多いので一体どうゆう経緯で誰がリクルートしてくるのか知らないがAもその一人。
Aは連休があるのでマニラに戻って家族と過ごしたいということを話してきた。
ただ問題はお金が無くて飛行機のチケットが片道分しか買えないということ。つまり私に貸してくれと頼んできているのである。
そんなの知らん!と一蹴することも出来たが、Aは日本人の観光客一向が来た時はその場をよく盛り上げてくれていた功労者の一人で私もその働きぶりには結構感謝していた。
なので全然知らない間柄という訳ではない。
ちなみにお願いされたのは2,000ペソ(約4,200円)。
往復じゃなくて片道分という絶妙な金額
さて貸すべきか…
しかしフィリピン人にお金を貸してもあまり良いことは起こらないと知っているし、ましてや失礼な言い方だがKTV嬢だと尚更…
しかし本当に往復の航空券が買えないとすればなんかとても不憫だ…
こんな実家から遠く離れた島に来て時給もなくお酒をオーダーしてくれなければ給料すら発生しない職場。そして家は店の2階の蒸し風呂状態のタコ部屋で他の嬢とみんなで住む。
こんな辺鄙なところまできてちゃんと仕送りが出来るほど稼げているのか疑問だが、実際に目の前にいるので実家の家族には会えず、またシングルマザー率85%超えなので我が子にも会えない日々を過ごしているのは確か
現実とは全然違うカラフルなスポットライトが走り、楽しそうな歌声が聞こえてくる店内で勝手に思いを巡らせる私
2,000ペソか…
もうすでにAの術中にはまってしまっている感じがある私
10万円とか言われたら即断るが4,000円を渋るのは何だか男としての自分の器の大きさを疑ってしまう…
私の揺らぎ始めた思考を見透かしたのかAは泣き落とし作戦に出て私の心の天使の部分を突っついてくる…
仕方ない…(溜め息…)
結局Aの作戦勝ちで2,000ペソを貸してあげることに。
これで家族に会えると喜ぶAをよそに私はこのお金が果たして返ってくるのか、というかAは本当に店に戻ってくるのかという心配をしていた
もしAが頭の切れる女であれば、いろんな人にこうやって2,000ペソを借りてそのままバックレれてしまえばパラワン島からの片道切符でオーシャンサヨナラ大作戦が成功する。
しかしそんなことを今更考えても既に主演AのKTV場外ライブのチケットは買ってしまっているので仕方ない
一体Aはどんな立ち回りをするつもりなのか
お客さんに指名されてテーブルへ向かうAの後ろ姿を見ながら出した財布をポケットに戻した。
続きはまた次回
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